手がかりとしての シナリオ ( トラン・アン・ユン 監督x 橋口亮輔 監督 対談)

週末、Apple銀座で行われた、トラン・アン・ユン 監督と 橋口亮輔 監督の対談に行ってきました。
6月後半は フランス映画祭 があるため、フランスの映画監督が来日されることが多いのです。

仲が良さそうなお二人の姿が印象的で、始終和やかなムード。
しかし、映画愛が激アツの対談でした。

個人的にも、トラン・アン・ユン監督(以下、ユン監督)の新作

『エタニティ 永遠の花たちへ』

の予告編に「 何事!? ぎゃー素敵!!!」ってなったので 笑
新作の撮影についてのお話を、大変興味深く聞かせていただきました。

 

◆「何を撮るか?」を決めずに臨んだ撮影

ユン監督は、作品を作るたびに、前とは違うことをすることを心がけてきたそうです。

クリエイターとして、同じ手法を続けないことを意識してきた。
どんな撮り方をしても、自分自身からは逃げられないから、自分に返ってくるとおっしゃっていました。

通常の撮影であれば今日はシーン〇〇番を撮ります、と決まっている。
シナリオに沿って、「どう撮るか?」「この場面では何を語るか?」を決めて撮るのですが、今回はその方法を取らなかった。

朝起きて「今日は何を撮るか?」を、監督自身が知らず、現場に行って、役者さんたちを見て、この人とこの人がいて、こんな衣装を着ている。じゃあこういう画を撮ろう。
というように、演出していったそうです。

リスキーな挑戦であり、「ちゃんと映画になるのかな?」と、不安になることもあったそうです。

そして、考えていたのは「この画の前後に、どんな画を繋げよう?」ということだった。

 

◆ 映画言語で語るということ

この新しい手法の狙いは、今までの撮り方にはないような「感情が動く瞬間」を生み出すこと。

「映画は、他の人を知るためではなく、自分の感受性を知るために見るのです」

「映画の本質とは、世界を教えることではなく、映画言語で語ることなのです」

「観客を尊敬するということは、観客が見たことのない、何か新しいものを見せることなのです」

と仰るように、情報を提示することではなく、映像で感情を揺り動かすことが狙い。
そして、シーンとシーンの間にこそ、人の心を震わせる瞬間が生み出されると考えているため、「どう繋ぐか?」を意識していたそうです。

今後の映画製作においては、ストーリーやテーマの他に、「どのスタイルで撮るか?」も選択するようになる、とのことでした。

 

◆手がかりとしてのシナリオ

「じゃあシナリオは?」というのが気になるところ。
橋口監督がさすが、そのことを聞いてくださいました。

シナリオ は2種類書かれたそうです。

ひとつは、資金集めのための、通常通り書き込んだ シナリオ 。

もう一つは、薄い(ページ数の少ない) シナリオ 。

薄い方 は、あくまでも、手がかりとしての シナリオ でしかなかったそうです。

しかし、プロデューサーに見せたところ、「こっちで行こう!」と、資金集めの段階から薄いシナリオを使用することになったそう。

どんなシナリオだったのか、内容が気になりますね!

 

◆人生について語り、理解しようとする。

橋口監督が、「死」を思い描くほど辛いことがあり、独り座っていた時。
なぜか、言い表せないほど満たされた感情になったそうです。

「まさに、『エターニティ』に繋がるような」という言葉を受けて、ユン監督がお話されたのは、「矛盾による美」について。

例えば、一見とても「平和」そうな場面の中の「死」のように。
矛盾によりある美しさが生み出され、エモーショナルな瞬間が作りだされるのだそうです。

また、映画を撮るということは、人生について語るということであり、人生について理解しようとすることである。

それゆえ、そうした映画にはまさに、人生そのものよりも真実が語られているのです。

という、熱いお言葉も。

 

女優の菊池凛子さんが、映画の中で泣く方が、現実よりも「本当に泣いている」と感じることを

「私は、おかしいのでしょうか?」

とユン監督に質問してきて、

それは、私たちにとってはごく普通のことですよ。

と答えたというエピソードが印象的でした。

 

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熱い映画愛を感じられる、素敵な対談でした。
ありがとうございました!

この写真が仲良さげなので載せたい。笑

 

2017年6月25日 Meet the filmmaker at Apple銀座

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『エタニティ 永遠の花たちへ』2017年秋公開
オフィシャルサイト:http://eternity-movie.jp/